Porsche - 編集部より

編集部より

驚くほど自然体な 911。コーヒーは周りの色で味が変わり、ワインは青い壁の部屋で飲むと甘く感じられるそうです。また試験を添削する際、採点者が一般的に用いる赤ペンを紫色の変えたほうが解答者の嫌悪感が少ないと言われています。黄色は創造力を豊かにし、橙色は食欲を引き立てる。ではさて、緑色のポルシェにはどんな作用があるのでしょう?

“自然”、“希望”、“成長”、“自由”、“自主性”、“青春”、そして “人生” を象徴する色は緑です。一方、ポルシェ911 は “高品質”、“パワフル”、“多様性”、“完璧”、 “唯一無二”、“タイムレス” といった言葉によって象徴されています。今年 5 月中旬、ツッフェンハウゼンで記念すべき 100 万台目の 911、タイプ 991 のカレラ S がラインオフしました。ボンネットには歴史的な紋章が、リアには金色のロゴ・グラフィックが刻まれ、ボディはポルシェ一族がお気に入りのアイリッシュグリーンで仕上げられています。

ポルシェ 911 はこれまで 55 年間の長きにわたって製造されてきました。半世紀近く、現行の 7 代目に至るまで進化を繰り返してきたのです。衰えは全く感じられませんし、実際、これまで製造された 911 の実に 70 パーセント以上が今なお現役です。流れ落ちるルーフライン、しずく型の躍動感あふれるサイドウィンドウ、そして筋肉質なフェンダー。スポーツカーを夢見る子供たちが無意識の内に描くシルエットには普遍の美が宿っています。最初期の 911 をデザインしたフェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェは生前、「均整が整った製品に装飾など必要ありません」と語っています。

これまで 100 万台製造され、これからもその数を積み重ねていく 911 は、果たしてエクスクルーシブであり続けられるのでしょうか。数が増え続けていく中で神話は守れるのでしょうか。どこまで成長すれば十分と言えるのでしょう。一体何台生産すれば十分なのでしょう。

伝統あるブランドは、自らの神話の中から前へ進むエネルギーを生み出そうとします。神話は伝統と革新から紡ぎ出されるものですが、911 ほどこの公式に当てはまるスポーツカーはないでしょう。ポル シェがレースで勝ち取った 3 万回におよぶ勝利の半分は 911 によって達成されたものなのです。かつてフェリー・ポルシェは 911 の魅力をこのように語っています。「技術の最先端にありながら驚くほど自然体を保てる 911 は、アフリカのサファリからル・マン、そして街の劇場へ私たちを連れて行ってくれます」。

“エクスクルーシブ” という表現は、希少価値の高さだけを伝える言葉ではありません。それは “顧客の期待に対する約束” であり “イメージ” であり、“存在意義” や “歴史”、“体験” を通じて私たち同好の顧客をひとつに結ぶ概念です。

911 はこれまでも、これからも、大量生産を前提としたスポーツカーではありません。ただひたすら数を追い求めるのではなく、“本当に優れた魅力的な 一台” であり続けてきました。そこには伝統とラグジュアリーの麗しい融合があったのです。伝統とは流行から切り離された豊かな生活感情。そしてラグジュアリーとは万人が味わうことのできない個人的な至高体験であります。

色は関係ありません。赤い 911 であっても歴史になり得ます。『999,999 台目の幸運と悲劇』をご覧ください。

皆さまがどこから来てどこへ行こうとも『クリストフォーラス』はいっしょにお供いたします。

クリストフォーラス - ポルシェ・カスタマーマガジン

カスタマーマガジンとして最も古い歴史を持つポルシェの『クリストフォーラス』は世界中から大きな支持を集めています。1952年に初刊が発行されて以来、各号には遠し番号が刻まれています。

旅人の守護聖人にちなんで名づけられた本誌はプロダクトインフォーメーションをはじめ、エンジニアリング、ならびに他では入手できない企業活動の舞台裏を読者の皆さまにお届けしています。

現在、『クリストフォーラス』は年5回、それぞれドイツ語、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、中国語(台湾)、日本語、韓国語、ポーラン語、オランダ語で発刊されています。

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