Porsche - テッドグシュー

テッドグシュー

「ポルシェがテーマだと、自然と力が入ります」

デジタル時代を切り拓いてきたパイオニアの中には、目まぐるしいと言われる世の中の流れは実際さほどでもなく実は思っているよりずっとゆっくりであるという認識を持つ人がいる。その最たる例が、月間閲覧回数が 200 万回を超える世界で最も人気の高い自動車専門ブログ “ペトロリシャス” の編集長テッド・グシューであろう。同ブログのユーザー層は愛好家からコレクター、さらにはレーシング・ドライバーまで幅広く、自動車の歴史解説やクラシックカー(とそのオーナー)にまつわるユニークなエピソードが人気を博している。特にグシューが綴るストーリーは支持が厚い。

ネットの世界でキャリアを積む前は写真家になるために専門教育を受けていたというグシュー。彼が個人的にいちばん好きなクルマは 1976 年型のポルシェ 911 S とのことで、「ポルシェがテーマだと自然に力が入りますね」と頬を弛める。約 1 年前、イギリス人のデレック・ベルと共にポルシェ 718 RS 60 でビデオを制作した時のことを思い出すと、今でも夢心地になると語る。それはそうだろう。デレック・ベルといえば1960 年にタルガ・フローリオを制覇し、ル・マン 24 時間レースで通算 5 勝(うち 4 度はポルシェ)を上げた伝説のレーシング・ドライバーなのだから。

グシューは自らの情熱の対象を生業にできたことをアフシン・ベニアに感謝しなければならない。べニアはペトロリシャスの設立者で、ライフスタイル・ブログで人気のあったグシューを 2013 年、ニューヨークからロサンゼルスに呼び寄せた張本人なのだ。ベニアが仕事の打診をした際、グシューはロサンゼルスまでの 4000 キロの道のりを自身の 911 で向かいたい旨を伝えたそうだが、さすがにそこまでの時間的な余裕はなく、結局飛行機で移動。その際、ポルシェは船便で送ることになり、ロサンゼルスの港で “高価” な荷物を受け取るまでの数週間、辛抱強く待たざるを得なかったのだと振り返り、笑う。

毎朝、自宅で世界各国から届くペトロリシャスの読者からの質問に答えた後、オフィスへと向かう “足” はもちろんポルシェ 911 だ。この愛車には自分の生まれ年である1988 年製の 911 カレラ 3.2 用エンジンを搭載しただけでなく、特別にシフト・ストロークを短くするほどの凝りようだ。愛犬ニュートンの指定席は後部座席。「オフィスまでのドライブは、私たちにとってとても素敵な日課です」と話す人気ブロガーは、時間を見つけてはロサンゼルスのワインディングロードを駆け抜けている。そう、ペトリシャスが掲げるテーマ “Drive Tastefully”(趣味良くドライブ)を体現するかのように……。

Bastian Fuhrmann
写真 Amy Gushue


誕生年: 1988
居住時: サンタモニカ
職業: エディター、写真家、編集長
ウェブ www.petrolicious.com
所有ポルシェ: 911 S(1976 年製)