Porsche - ジャン・コウム

ジャン・コウム

「ポルシェを手に入れたいという願望が、勉学と勤労に励むための究極のモチベーションになりました」

誰もが知るメッセージアプリ、WhatsApp。しかしそのサクセス・ストーリーの立役者、 ウクライナ出身のジャン・コウムを知る者は意外に少ない。今日、世界中で 10 億人以上が 利用するアプリを発明した男、ジャンは、その後もアプリの洗練を続け魅力的なサービスに仕上げていった。そして 2 年前、Facebook 社が彼の WhatsApp を 190 億ドルで買収したのである。以後、ジャンは Facebook の取締役となり、世界長者番付の上位 200 人の中に位置する男となる。

コウムのスキルを外見から判断するのは難しい。公の場に姿を現す時は、T シャツにジーンズとスニーカーというプログラマー・スタイルを貫いているからだ。服装と同じく、車に関してもコウムは妥協しない。「私にとって、クルマのブランドとはポルシェだけなのです。 昔から夢見てきました」と語るコウムはキエフ近郊の街で育ち、16 歳の時、母親と共にアメリカのシリコンバレーに移住した。2 人はここでの生活の始めに生活保護を受けながら懸命に働いたという。青年ジャンはスーパーマーケットの清掃。そして母親は出来高払いのワイシャツのアイロンがけ。その当時、ジャンの前を走り過ぎた 1 台のポルシェが彼の夢となった。ジャンは自分の目標を定めたのだ。「私にとってポルシェは、成功の象徴でした。いつかポルシェを所有したいという願望が、勉学と勤労に励む究極のモチベーションのひとつとなったのです」。彼は大学でプログラミングを専攻し、9 年間 “Yahoo” に勤めた後、2009 年に “WhatsApp” を設立したのである。

ジャンが夢をかなえたのは Yahoo 在籍時の 2006 年、2003 年型のカブリオレが最初のポルシェとなった。当時の私は「カブリオレに目がなかったのですよ」と微笑みながら振り返るコウム。ほどなくその好みも変わり、964、そして 993 シリーズのクーペを乗り継いでいく。「空冷エンジンの 911 はやはり格別です」。

彼は今でも 911 コレクションを増やし続けているが、そのラインナップには 2 つの究極モデルーー964 RS 3.8 と 964 ターボ S ライトウェイト──が欠けている。ジャンは語る。「私はラジオがついていないか、あるいは取り外せる車輌を好んで購入します。フラットサウンドほど素敵な音楽はありませんからね」。

Thomas Lötz
写真 Robert Gallagher


生まれ年: 1976 年
居住地: アメリカ、サンフランシスコ
ポルシェ: 911 スポーツクラシック(2010 年型)
職業: コンピュータサイエンティスト、 Facebook 取締役