2011年に全戦勝利、シーズンパーフェクトを達成した安岡秀徒がポルシェカレラカップ(PCCJ)を卒業した2012年シーズンは、カレラカップルーキーたちの活躍が目覚ましい1年となった。デビュー間もない序盤戦から予選で速さを見せつけ、最終的に7勝を挙げてチャンピオンクラスのタイトルを獲得した#14 平川亮、ジェントルマンクラスのタイトルを獲得した#19 永井宏明の成長ぶりはラウンドごとに注目を集めた。#14 平川は今季のPCCJ育成ドライバーとして参戦し、第4戦以降は確実にシリーズを引っ張る存在のひとりとなった。ただこの二人、決して楽に頂点を奪ったわけではない。2012年は対抗馬の数が例年以上に多かった。
#14 平川の最大のライバルとなったのは、ディーラーチームとして初参戦した#11 エクセレンスモータースポーツ。 経験豊富なレーシングドライバー山路慎一と、現役SUPER GTドライバーの山野直也が1台をシェアして参戦する形で、ふたりはその実力どおりの速さと強さをコース上で見せつけた。また2011年ジェントルマンクラス王者の#15 神取彦一郎、ベテラン#5 高見沢一吉、2年目の#22 マイケル・グリーン、PCCJ初挑戦ながらFCJやSUPER GTへの参戦実績を持つ#90 イゴール・スシュコなど、チャンピオンクラスは誰が勝ってもおかしくない実力者揃いだった。ジェントルマンクラスにも、昨年シリーズ2位の#16 横幕ゆぅだけでなく、クラス表彰台の登壇経験もある#3 江本玄、#8 櫻井澄夫、#32 飯田太陽、そしてルーキーながら2年前からポルシェのアマチュアレースに参戦して何度も表彰台を得ている#2 田島剛、2011年のGT3 カップチャレンジ ジャパンでチャンピオンを獲得してステップアップしてきた#33 Tetsuo OGINOら有力者ぞろいで、全てのラウンドでも激戦が展開された。
そんな激しいシーズンの幕開けの舞台となったのはスーパーGT併催の岡山国際サーキット(岡山県)。ダブルヘッダーの2戦ともに、トップ争いは接近戦が繰り広げられた。第1戦、17台が並んだグリッド上はハーフウェット。このためスリックタイヤか、レインタイヤにするかでスタート時から戦略も大きく分かれた。デビューしていきなりポールポジションを獲得した#14 平川はレインタイヤを選んだ。だが、路面は数周で乾いてしまい、レインタイヤ勢には不利な展開となってしまう。スリックタイヤスタートを選んだ#11 山路、#90 イゴールが#14 平川を次々にパス。レースはこの2台の一騎打ちとなり、10周目にトップを奪った#90 イゴールが勝利を挙げた。完全ドライとなった第2戦は実力どおり#14 平川と#11 山路が後続を引き離してハイレベルな戦いを展開。最終的に経験値で勝る#11 山路がトップチェッカーを受けた。ジェントルマンクラスは#16 横幕が第1戦で総合4位を獲得。第2戦はその#16 横幕と激しく争い、ルーキーとは思えない冷静さで#19 永井が総合4位の座を獲得した。
第3〜5戦は富士スピードウェイ(静岡県)での3連戦。第3戦こそ山路の代打で参戦した#11 山野が勝利を奪ったが、初優勝を挙げた第4戦以降は#14 平川の連勝劇がスタートする。雨の第4戦でも、ドライの第5戦でも独走。#14 平川はカップカーに完全に順応し、独自のドライビングスタイルを構築した。#11 山野をはじめ、ライバルたちもその急成長ぶりに驚きを隠せなかった。またこの富士では、ジェントルマンクラスの主導権争いが激化したポイントでもあった。第4〜5戦では#2 田島、#19 永井のふたりがクラス優勝だけでなく、それぞれ総合3位に入り表彰台に登壇。ランキングにおいては#19 永井が#16 横幕を抜いてリーダーとなった。
舞台がスポーツランドSUGO(宮城県)に移った第6〜7戦でも、#14 平川の大躍進は続いた。2戦ともにポールポジションからスタートし、誰にもラップリーダーを譲ることなくチェッカーまで独走して連勝を4まで伸ばした。同じく、ジェントルマンクラスのルーキー#19 永井の進化も止まることなく、このSUGOではチャンピオンクラスの有力ドライバーたちと互角に渡り合い、#14 平川に続く2位表彰台を連続獲得。また上位陣の混戦をうまくすり抜け、第7戦では#32 飯田が3位表彰台、#8 櫻井も表彰台にあと一歩の総合4位まで上がり、ふたりともに今季ベストリザルトを残している。
第9〜10戦はF1日本GPのサポートレースとして、日本のモータースポーツの聖地、鈴鹿サーキット(三重県)で開催された。延べ20万人を超える大観衆の中でも動じることなく、#14 平川は#11 山路の猛攻を防ぎ切り、この鈴鹿で7連勝を達成。同時に、最終戦を前に2012年のチャンピオンクラスのシリーズタイトルも決めた。一方、ジェントルマンクラスはシリーズをリードする#19 永井がミスを連発してしまい、タイトル争いは一気に緊張感を増した。第9戦でリタイア、第10戦では何とか完走を果たしたが、この2戦で得られたのはわずか2pt。最大の対抗馬である#16 横幕も決して楽な展開ではなかったものの、2戦で21ptを加算して#19 永井との差を14ptにまで縮めて望みをつないだ。
迎えた最終戦の舞台はツインリンクもてぎ(栃木県)。タイトルを早々に決定した#14 平川の凱旋レースとなったが、不運やミスが重なり#14 平川は第11〜12戦ともにチェッカーまで走り切ることができなかった。完璧なレースで両レースを制したのは#11 山野で、雨の第12戦では後続を25秒以上も引き離した。ジェントルマンクラスの#19 永井にとって、この週末も苦しい展開となる。予選こそクラストップながら、第11戦では#16 横幕の勝利を許してしまい自らは9位まで転落。ポイント差は縮まってしまう。しかし、すべてが決まる第12戦では“永井らしい”落ち着いたレース運びでクラス3位を獲得して、2012年のジェントルマンクラスのタイトルを手にした。なお、この第12戦では#33 Tetsuo OGINOが自身初のクラス優勝を果たすとともに総合2位を得て、さらに#2 田島が今季二度目の総合3位に入る活躍を見せた。
最終的なチャンピオンクラスのランキングは#14 平川をトップに、#22 マイケル、#5 高見沢、#11 山野と続き、ジェントルマンクラスは#19 永井をトップに、#16 横幕、#2 田島、#32 飯田。この1年を振り返って、#14 平川は「ハコ車の走らせ方を理解できた。フォーミュラとの違いについても少しは理解できたかなと思います。影山(正美)アドバイザーとはセッティングの仕方とかについて話をすることも多いですが、スーパーGTでもポルシェで出られていますし、非常にためになりました」と語った。#14 平川はドイツポルシェAGが行う若手レーシングドライバー育成プログラムの選考テストに日本代表として参加することになり、最終戦翌日にはドイツへ飛んだ。「英語でどうコミュニケーションをとれるかというのと、出し切るものを出し切って、今年ポルシェで学んだことを全部出せればいいかなと思います。日本のチャンピオンとして自信を持っていきたいと思います」。#19 永井も「いろんなことがありましたが、非常に濃密な経験ができました。チームの力もあって結果が出たので、他にないくらい素晴らしい1年だったと思います。この1年で自分のドライビング、そしてチームとしてのレベルアップもできたと思うので、それは大きな収穫だったと思います。チャンピオンを獲得したので、来年はチャンピオンクラスへのステップアップをしたいと思っています」と今回のタイトルが最終目標ではなく、すでに将来に向けての挑戦を開始。#14 平川、#19 永井の将来と同時に、PCCJの2013年シーズンに期待をしたい。