ポルシェ 911 GT3 RSRが、デビュー戦となるスパ24時間耐久レースで大健闘
ポルシェ AG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:Dr.ヴェンデリン・ヴィーデキング)のモータースポーツ専用車両である2台の911GT3 RSRが7月29、30日にスパ・フランコルシャン(ベルギー)で開催された24時間耐久レースに出場し、好成績を収めました。
ポルシェは、公道仕様の911GT3 RSをベースにこのレーシングスポーツカーを開発し、それをオラフ・マンタイ氏が率いる経験豊かなマンタイ・レーシング・チームの手にゆだねました。ゼッケン111の911GT3 RSRは、ティモ・ベルンハルトとマルク・リープ(ともにドイツ)とペドロ・ラミー(ポルトガル)が、ゼッケン197のGT3RSRはルカス・ルール(モナコ)、サシャ・マーセン(ベルギー)、およびマルセル・ティーマン(モナコ)がステアリングを握りました。
ゼッケン111と197のポルシェ911GT3 RSRは、プロダクションカーをベースに若干の変更が認められているプロダクションカーベースのグループ 2クラスにエントリーし、予選では、ルールが、このクラスにおけるファステストタイムをマークし、この新しいポルシェのレーシングスポーツカーのポテンシャルの高さを見せつけました。
決勝レースにおいても、前半までNo.197のポルシェ(ルール/マーセン/ティーマン)がクラストップを走っていましたが、アンダーボディへのダメージでラジエーターパイプを破損、ピットでの作業を余儀なくされ、もう1台のポルシェにトップの座を譲りました。その約1時間前、ペドロ・ラミーはアクシデントによりピットイン、フロントパネル、ラジエーター、アンダーボディ修理という事態に見舞われましたが、No. 111 のポルシェは総合順位を 2 位下げただけでレースに復帰していました。
レース終了3時間前、ルール/マーセン/ティーマン組はホイールナット固着のため右リアアップライトを交換、そのまま総合14位でフィニッシュ。このとき10番手につけていたリーブ/ベルンハルト/ラミー組は、ギアボックスのトラブルによりピットイン、ギアボックスを交換して総合15位でフィニッシュしました。このレースでは、はるかにパワフルなGT1クラスの車両がレースをリードする中、911GT3 RSRは、グループ2でクラス1位、2位を独占し、総合でも10位以内に入る活躍を見せました。
ポルシェのモータースポーツ部門のトップであるハルトムート・クリステンは、次のように総括しています。「総合10位以内に入れる可能性はあったと思います。もし実際10位以内でレースを終えていたら私達のニューマシンにとっては素晴らしいことだったでしょう。しかし、私達がこの過酷なレースを選んだ目的は、僅か4カ月半の開発期間でどれくらいのポテンシャルを発揮できるかを知るためでした。不確定要素や時間的なプレッシャー、そしてライバルのいるレースでないと、実際の車の実力はわかりません。ラップタイムからは、両車のコンペティションマシーンとしての確かな資質と優れた整備性が証明されました。さらに私達は細部について多くの情報を得ることができました。仕上がりは順調ですが、まだ煮詰めていかなければならない部分もあります。特に新しいギアボックスについてはさらに改良を重ねていくつもりです。1月のホモロゲーションを前にして、ここスパで得たすべてのことは、この車のさらなる開発のため、そして2007年モデルのカスタマー向け車両のために、大いに役立つことになるでしょう。私は、多大な努力を惜しまなかったチーム全員に感謝したいと思います」。
ポルシェとマンタイ・レーシングにとって、このレースは重要なテストの場であると同時に、現在のマシンのポジションを見極める機会でした。このレースは911GT3RSRにとって現時点で2006年に予定されている唯一のイベントであり、2007年には、911GT3 RSRが先代モデルに続く成功を目指して、レース出場チームに向けて発売される予定になっています。ポルシェで参戦するチームは、2001年に911 GT3が初めてスパのレースに出場して以来、毎年クラス優勝を果たしており、2003年には総合優勝を飾っています。
FIA GT選手権、アメリカン・ル・マン・シリーズ、ル・マン・シリーズ、さらにはル・マン、デイトナ、セブリング、そしてニュルブルクリンクと、GT3はこれまでにさまざまなモデルが数多くの記録を打ち立て、タイトルを獲得しています。
911GT3 RSをベースに開発した現在のGT3 RSRは、911GT3の流れを受け継いだ特に軽量でスポーティなモデルであり、A.C.O.(フランス西部自動車連盟)、FIA-GT、およびIMSA(現 PSCR)のレース規定に準拠しているほか、VLN(ニュルブルクリンク・ビードル耐久レース)の規定にも適合しています。
ポルシェは、A.C O.および FIAの規定を分析した結果、GT3 RSRの車重を規定上の最低重量である1,225kg(前モデルは1,125kg)とし、タイヤ幅は2インチ広い14インチとすることに決定しました。規定に合わせるための35kgのバラストを最適な方法で車両に搭載できるようにしたことで、重心をさらに低くすることが可能になっています。
ポルシェの自然吸気エンジンの場合、この仕様の範囲内ではエンジンの排気量を3.8リッターとし、直径が29mmで長さが 30.3mmのエアリストリクターを2つ設けることができます。また排気量の増加はストロークを76.4mmとしたまま、ボアを102.7mmに拡大することによって実現しています。必要とされるエアリストリクターを搭載した際のエンジンパフォーマンスは、最高出力が357kW(485PS)/8,500rpmで、最大トルクが435Nm、エンジンの最高回転数については9,000rpmに達します。電子制御システムの処理能力が向上したことと、制御プログラムが新しくなったことで、パフォーマンスだけでなく、レスポンスと操縦安定性もさらに向上しています。このほかフロントのセンターラジエーターの位置を変更したことと、サイドラジエーターを採用(高性能のカレラGTより継承)したことにより、エンジンを最適な温度に保てるようになっています。
スパ24時間耐久レースに備え、GT3 RSRには先代モデルで実績をあげている6速シーケンシャルトランスミッションが搭載されています。また2007年にポルシェで参戦するチームのマシンには、RSスパイダーがアメリカン・ル・マン・シリーズで使用したのと同じギヤを備える、新型の6速シーケンシャルトランスミッションが搭載される予定です。動力の取り出し位置を変更したことによって、ドライブシャフトの角度が小さくなっており、効率性と耐久性が向上しています。
溶接式のロールケージを装備したGT3 RSRのボディシェルは、先代モデルよりも剛性が10%向上しています。また独自のフェンダーを採用したことでボディの幅も左右それぞれ50mm拡大されており、トレッドが広くなったことから、装着するホイールやタイヤのサイズを可能な限り大きくすることが可能です。
サブオイルタンク(オプション)、パワーステアリングユニット、バッテリーの位置をフロント方向に移動させたことにより重量配分が改善しています。フロントとリアのフード、フロントフェンダー、ワイドなリアセクション、ドア、フロントとリアのアウターパネル、スポイラーにはカーボンファイバー複合素材が用いられており、リアウインドウとサイドウインドウについては軽量ポリカーボネード製になっています。
新規開発されたエアロダイナミクス パッケージにより、エアロダイナミクスの効率は先代のGT3 RSRに比べて、合計で約7%向上しています。ラジエーター、ブレーキ、エンジンに対するエアフローはこれまで以上に最適化がなされているほか、FIAおよびA.C.O.のレギュレーションに適合させるため、ニューGT3 RSRのアンダーフロアはフラットな形状に仕上げられています。
最適化を施したストラットをフロントサスペンションに装備し、リアサスペンションにマルチリンク方式を採用している点は、ポルシェの標準モデルと同じです。前後サスペンションは、タイヤの接地面積を拡大し、ダンパーが伸縮する際のキャンバーの変更を最小限に抑えるようにジオメトリーが変更されています。またショックアブソーバーにはスルーロッド システムを特徴とするZFザックス製の新型ショックアブソーバーが用いられており、従来のダンパーよりもチャンバー圧が低く摩擦が軽減されています。この結果、ショックアブソーバーのレスポンスは大幅に向上しました。このほかにもリアアクスルの位置が最適化されており、アクスルには新しいスタビライザーに加えて、調節可能なアッパーリンクと最適化が施されたロアリンクが装備されています。
ブレーキシステムは、フロントに対向6ピストンのアルミニウム製キャリパーと、直径380mm、厚さ35mmのブレーキディスクを装備し、リアには対向4ピストンのアルミニウム製キャリパーと、直径355mm、厚さ30mmのブレーキディスクを備えています。ブレーキ マスターシリンダー付のピボットアクスル(先代モデルでは圧力ロッド)を採用しているため、ブレーキからドライバーへのフィードバックが改善しています。
911GT3 RSRは、2006年から2007年の冬までに、35台が初期ロットとして生産される予定です。
2006/8/2