Porsche

アーカイブ 2005


世界デビューを迎える次なる技術: VTG

ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:Dr.ヴェンデリン・ヴィーデキング)は、次世代の911ターボにおいて世界で初めて可変タービンジオメトリー (VTG) 採用のターボチャージャーをガソリンエンジンに搭載することを決定いたしました。

ターボチャージャーテクノロジーにまつわるコンセプト。それはまさにポルシェという名前、そしてポルシェブランドと不可分の関係にあります。1974年 10月、ポルシェは排出ガス駆動型のターボチャージャーを搭載した量産スポーツカーを世界に先駆けてリリースしました。以来、歴代のポルシェ911ターボは、その特徴あるテクノロジーによって世界中のファンを魅了し続けています。
インタークーラー、ツインターボ、バリオカム・プラス。これらはすべて「世界で最もクリーンな車」という肩書きとともに、ターボチャージャー開発の中でベンチマークを確立してきました。
そして今回、ポルシェは次世代911ターボの導入に合わせて、世界で初めて可変タービンジオメトリー(VTG)採用のターボチャージャーをガソリンエンジンに搭載することになります。

90年代以降、ディーゼルターボの特徴となったVTGテクノロジーは、特に低回転域におけるエンジンのフレキシビリティと加速性能を著しく改善させるものです。しかしこれまでは、ガソリンエンジンの排気温度がディーゼルターボと比べて高く、その温度が1,000℃にも達することが、ガソリンエンジンでの使用を妨げる壁となって立ちはだかってきました。しかし今回ポルシェは、ボルグワーナーターボシステム社との密接な協力を通じてスペーステクノロジーの分野で利用されている耐高温素材を採用することでこの問題を解決しました。

VTGシステムの中核的な特徴とされるのは可変タービンブレードは、排出ガスで駆動される大小2つのターボチャージャーのメリットを1つに融合させたもので、低回転域におけるレスポンスの良さと大きなトルク、そして高回転域における卓越した出力と高いパフォーマンスを約束するものです。このブレードがエンジンから出される排出ガスの流れの向きを状況に応じて変化させ、排出ガスで駆動されるターボチャージャーのタービンホイールへと導きます。この結果、 VTGシステムは、より幅広い回転域で最高水準のトルクを維持できるようになります。


11月16日のビッグアニバーサリー

排出ガスを利用するターボチャージャーは、今から100年前に発明されました。スイスのエンジニアであるDr.アルフレッド・ビューヒ氏が、コンプレッサー(タービンコンプレッサー)、ピストンエンジン、そしてタービンを連鎖的に作動するように設計した内燃機関を発明し、1905年11月16日、ドイツ帝国特許庁により特許を授与されたのが始まりです(特許番号 204630)。

1879年7月11日に生まれ、1959年10月27日にその生涯の幕を閉じたビューヒ氏は、スイスの町ヴィンタートゥールでエンジニアとして働いていました。彼はエンジンに吸入される空気を予め圧縮するだけではなく、本来ならば排出してしまうだけの高い圧力を持った排出ガスに着目し、その運動エネルギーを利用しようと考えました。そこで彼は、燃焼行程の結果出される排出ガスによってタービンを作動させることで、コンプレッサーによる吸入空気の事前圧縮とエンジンに対する過給を実現しました。これがターボチャージャーの誕生です。

しかし実際ビューヒ氏の発明が実用化されるまでには長い時間を要しました。ターボチャージャーが最初に利用されたのは大型の海洋エンジンに対してで、ドイツ運輸省が1923年に建造を委託した客船、「ダンツィヒ号」と「プロイセン号」で用いられました。これら2隻の客船はともに10気筒のディーゼルエンジンを搭載し、ターボチャージャーの過給効果によって、1,750PS~2,500PSの出力を発揮しました。

このテクノロジーを自動車に利用する試みが最初に行われたのは1950年代の後半のことで、当時は依然としてスロットル操作に対するエンジンレスポンスの遅れ、いわゆる「ターボラグ」が克服できない課題として開発エンジニアの前に立ちはだかっていました。

1973年、ポルシェは最新のターボチャージャーテクノロジーを搭載し、1,100PS以上の出力を発揮する917/30で米国のCanAMシリーズに参戦しました。この超高出力を誇るレーシングカーは、サーキット上の競合相手を完全に圧倒しましたが、その後CanAMシリーズのレギュレーションが見直されたことを受け、格の差を示した917/30はミュージアム行きとなってしまいました。


ツインターボチャージャー採用の初代911

最高出力260PS、最高速度250km/h、そして0-100km/h加速5.5秒など、至高のパフォーマンスを誇った初代ポルシェ 911ターボは、1974年のパリ・モーターショーで堂々たるデビューを飾りました。このスーパースポーツモデルは5,500rpmといった低回転で最高出力を発揮するほか、343N・mの最大トルクを4,000rpmで発生させていました。当時ポルシェが成し得たこのトルクは、ターボチャージャー採用のパワーユニットとしても前代未聞の水準にありました。ポルシェのエンジニアは、バイパスバルブを巧みに利用することで、エンジンの出力変動を比較的調和のとれたものにすることができたのです。また「ターボラグ」を抑えるため、ポルシェの開発エンジニアは小型のターボチャージャーを採用しました。この結果ターボチャージャーが作動を開始するタイミングは早まり、トルクの谷が感じられることも少なくなりました。

1977年に市場に導入された初代ターボの後継モデルは、3.3リッターのエンジンを搭載し、300PS以上の高出力を発生しました。市販モデルとして初めて採用された最新装備、インタークーラーは出力の向上に大きな役割を果たしました。インタークーラーはターボチャージャーによって圧縮された高温の空気を100℃以下の温度に冷やす働きをし、エンジンの出力を損なうことなくターボチャージャーの圧力を下げることを可能にしたのです。


ポルシェ 911ターボ - あらゆる点で完璧な1台

1990年ポルシェはニュー911ターボを導入することで最上級モデルのセグメントを拡大しました。50パーセントの大型化を図ったインタークーラー、同様に大型化したターボチャージャー、そして圧力制御に配慮したイグニッションマップ。これらは同モデルの最高出力を320PSまで押し上げることに貢献しました。また同時このニューモデルは非常にクリーンな1台でもあったのです。金属基板技術を応用した3元触媒コンバータを完全に制御する先進の排出ガスマネージメントシステムは、最も厳格とされる米国の排出ガス規制の要求基準を満たすものでした。さらにバイパスバルブから出される排出ガスについても、別の触媒によって浄化がなされる仕組みになっていました。

第4世代となる911ターボは、911カレラに搭載された3.6リッターのパワーユニットをベースとして1995年の初めに登場しました。しかしこのときツインターボチャージャーを特徴とする新しいパワーユニットが搭載されていたことから、エンジンのパフォーマンスを示すスペックは新たな次元に突入していました。技術的最高傑作とされるポルシェ959が排出ガスで駆動される第2のターボチャージャーを1987年に初めて搭載して以来、ツインターボチャージャーのテクノロジーは、シリーズカーの生産においても成果をあげることができるようになりました。

ニュー911ターボの最高出力は408PS/5,750rpmで、最大トルクは540N・m/4,500rpmでした。これは紛れもなくセンセーショナルなパフォーマンスを約束するスペックであり、実際911ターボは0-100km/h加速で4.5秒を記録するとともに、最高速度の290km/hまで切れ目のない加速を見せました。2つの小型タービンが排出ガスのフローに対し鋭く反応し、出力特性はより一層調和が取れたものとなっていったのです。

ポルシェのエンジニアが生み出したもうひとつの傑作は、車両の排出ガスマネージメントシステムでした。オンボードダイアグノシス II(OBD II)に準拠したポルシェの新しい排出ガスマネージメントシステムとそれに関連する高度な触媒技術は、911ターボ(タイプ993)を世界一クリーンな車として認めさせました。またエンジンの「頭脳」ともいえる電子制御装置を使用することで、OBD IIシステムは排出ガスマネージメントの観点から可能性のある不具合を検知し、連続した診断の結果、合計20の不具合を記録することができました。


2つのエンジン特性を1つに融合

2000年の初めに販売開始となったタイプ996の911ターボの最も目立った技術面での特徴は、バリオカム・プラスです。この独創的なシステムは、燃費の低下と排出ガスの低減に効果を発揮するとともに、エンジン特性をより洗練されたものにしています。この優れたテクノロジーがもたらす更なるメリットは、エンジンの出力とトルクを最適化することで、911ターボではこの結果、420PS/6,000rpmの最高出力と、305km/hの最高速度を実現しています。一方燃費に関しては、先代モデルと比較した場合、18パーセントの低減を達成しています。

バリオカム・プラスは、2つのエンジン特性を1つのエンジンで発揮するという大きなメリットを持っています。モトロニックエンジンマネージメントシステムが吸気側のカムシャフトを調整し、吸気バルブのストロークが可変制御されます。つまり10mm以下の妥協のないカム制御により、アイドリング時や部分負荷の場合におけるさらなる燃費削減と排出ガスの低減、そして全負荷時における大トルクの発生が実現可能となったのです。

2005/11/15